【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
「でも一向に、家にも戻ることもないし、結婚をするとも聞かないし、もしかしてあの時の事を気にしてるんじゃないかって思ったみたいで。早川頭取のお話をとても喜んで聞いてらしたわ。お互いを思いあっているってきいたからだと思うけど、芳也がようやく幸せを掴むんだってね。でも、あなたが『誰も愛さない』と言ったその言葉を聞いて、お父さんとっても悲しんでいたと思うわ。だから今回健斗と和解して、好きな人がいるって聞いてお父さんはきっと今頃ホッとしていると思うわよ。お父さんは愛情を表現するのが苦手な人だから」
そう言ってクスクスと笑った母を、芳也は黙って見ていた。

「だから、芳也。今度その彼女を連れて遊びに来て頂戴ね」
その言葉に芳也は更に黙り込んだ。
「芳也?」
母の言葉に、芳也は悲しそうに笑うと、

「もう遅いかもしれないけど、全力でもう一度俺を見てもらえるように努力するよ。俺は彼女も傷つけてしまったから」
「そう。でも、やり直しはいくらでも効くわ。何度でも謝って手に入れなさい。それが宮田の男よ」
母のその言葉に芳也も大きく頷いた。

「お父さんきっと、その彼女を認めるのにも一癖つけそうね……。でもそれはこの家に生まれたのだから諦めなさい」
クスクスと笑う母に芳也も微笑むと、母は嬉しそうに、「久しぶりに芳也の笑顔を見れて嬉しいわ」そう言ってまた笑った。





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