【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
「それで?家出娘の水崎さん。帰る所ないんだよね?」
「うっ……」
(いきなり、社長の笑顔をしないでよ……本当に怖いよ……何を企んでるの?)

「図星だね……概ね、同棲していた彼氏に浮気でもされた?」

いきなり確信に触れられ麻耶はギクッと体を強張らせた。
「それは大変だね。住むところも探さないといけないし……」

(やばい!このままじゃ社長の思うつぼだよ)

「大丈夫です!友人の所にとりあえず……」
「そんなの長く続かないだろ?今は仕事も忙しいし不規則な生活だ。友達もいい迷惑だな。ワンルームの部屋に深夜に帰ってきたり、朝早く出かけたり……。それに水崎さんは休みも少なし不動産屋に行く暇もないだろうし。ああ可哀そう」
「誰のせいですか!!」
あんたの会社の為にやっているのに!と思わず麻耶は声を上げた。

(あっ!しまった!)

「だから、僕の家においてあげるって言ってるんだよ?君の働く会社の社長として、路頭に迷う社員を放ってはおけないからね」

(僕?僕って誰よ……さっきまでさんざん俺って言ってたくせに!)

ニヤリと口角を上げ、妖艶ともいえる顔をむける芳也に、麻耶は唇を噛んだ。
「……それで?私に何をしろと?まさか本当に体で……」
そこまで言って麻耶は自分の体を腕で抱きしめ、後ろに身を引いた。
そこで、あざ笑うかのような顔を向けた芳也は

「女には困ってない。お前の体なんかに興味ある訳ないだろ?」
まるで「お前は馬鹿か?」と言う声が聞こえてくるようで、麻耶はキッと睨みつけた。

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