【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
心配そうに言った麻耶に、芳也は思い出したように目を細めると言葉を続けた。
「ちなみに、その時の女の人、小百合さんって言うんだけどその人にも殴られた。小百合さんはもう結婚して子供もいて、俺に幸せにならないと許さない。そう言ってくれて」
ホッとしたような表情をした芳也を見て、麻耶もうれしくなり微笑んだ。
「そうだったんですね。よかったです」
「親父やお袋とも久しぶりにきちんと話ができて、誤解も解けた。きちんと話をしないとお前と向き合えないと思ったから。アイリとの結婚もきちんと断ったから。全部麻耶のおかげだよ。麻耶と会えたからこうして俺はきちんと過去を清算できた。本当にありがとう」
急にお礼を言われて、麻耶は照れたように笑った後、少し考えてから言葉を発した。

「アイリさんは?」
「アイリは……。アイリにはきちんと俺の気持ちは伝えてある。泣いていたけど……」
「そうですか」
以前会った時のアイリの真剣な表情を思い出して、麻耶も表情を曇らせた。
「麻耶?」
ちょうど麻耶のマンションの前に到着し車を停めると、その表情の意味が解らないといった表情をした芳也は、麻耶を見つめた。
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