【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
「麻耶、和食とイタリアン……」
そう言いかけた芳也に電話がなった事を知らす音が車に響いた。

ナビのディスプレイに表示された【健斗】の文字を見て、芳也は路肩に車を停めた。

「もしもし?」

少し困ったように返事をしながら、チラリと麻耶を見ると芳也は言葉が言葉を濁しているのが麻耶にも分かった。
「今日?親父が?」
そに言葉に、麻耶は実家からの急な誘いという事が解り、芳也の肩に触れると笑顔で頷いた。

「いや……でも……」
尚も麻耶を気にする芳也に、麻耶は大丈夫と小声で言うと芳也を見つめた。

「わかった。後で行く」
そう返事をして電話を切った芳也は「ごめん」と言うと、麻耶を見た。
「大丈夫です。私明日からの食材を買いにスーパーにも行きたかったし、荷物も片付けたいから。また食事は連れて行ってください」
麻耶は笑顔を向けて芳也に言うと、
「あー、クソ。俺が麻耶と一緒にいたかったの」
少し拗ねたように言った芳也は、麻耶を抱きしめると「ありがとう」そう呟くとそっとキスを落とした後、車を発進させた。

「じゃあ、悪い。ちょっと行ってくる。なるべく早く帰るから」
麻耶を家まで送り届けると、芳也はそう言って実家へと出かけて行った。

(今日からまた一緒にいられるんだから我慢しなくちゃね)

麻耶は自分に言い聞かすように言うと、荷物を片付けてスーパーへと向かった。

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