【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
「芳也さん?……いつまで見るの?」
そろそろと瞳をゆっくりと開けた麻耶に、びっくりして芳也は目を見開いた。
「起きてたのか?」
罰の悪そうな顔をして麻耶は、

「起こさないようにしてくれてるの解ったから、もう一度寝ようとしたんだけど……芳也さんもすぐ寝るかなって思ったから……。でもずっと視線を感じるし」
恥ずかしそうに言った麻耶は、ふわりと笑うと、

「おかえりなさい」
そう言って芳也の首にギュッと抱きついた。
「ただいま」
抱きしめ返して芳也は言うと、「麻耶だ……」そう言って大きく息を吐いた。

「泊まるかもしれないって言うから、もう帰ってこないかと思った」
芳也の胸の中でくぐもった声が聞こえて、芳也は少し腕の力を緩めた。

「やっぱり麻耶の所に帰りたかった」
素直に言われた言葉に、麻耶は恥ずかしくなって頬が熱くなった。
「ありがとう……でも帰ってきて大丈夫でしたか?」
呟くように言った麻耶に芳也はクスリと笑った。
「ああ、本当はもっと早く帰って来たかったんだけど、兄貴の結婚の報告と食事会だったから。遅くなってごめん」
「え!お兄さん結婚するんですか?よかったですね!」
自分の事のように言った麻耶に、芳也は嬉しくなり麻耶の瞳を見つめた。

「やっぱり、麻耶が好きだ。その優しさ、強さ、明るさに俺は憧れて、ずっと欲しかった……」
「芳也さんは優しいですよ。それに強いです」
そっと芳也の頬に麻耶は触れると、ふわりと笑った。
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