【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
「やっぱりミヤタの車は買いづらくてこの車にしたんですか?」
「そういう訳じゃないよ。ここの車は仕事を始めた時に付き合いがあったから買っただけ。でもやっぱり小さい頃からずっとミヤタの車を見て育ったから、楽しみだよ。また乗るのは」
優しい顔で話す芳也を、麻耶もホッとして見つめた。

「私も楽しみです」

「それに、フェルチェンヌは兄貴が関わって作った車だから」
「健斗さんって専門は技術職なんですか?」
「ああ、そうだよ。兄貴は工学部を出た機械のプロだ。今も全面的にフェルチェンヌを見てるって言ってた。俺には理系のそういう才能は無かったから」
「そうなんですね。芳也さんは専攻は?」
「俺は経営学。ブライダルをやってなかったら、コンサルタント業とかをやってだだろうな……」
そう言いいながら、芳也は高速に乗るとさらにアクセルを踏んだ。

「気持ちいですね……」
窓から流れる景色を見ながら、麻耶はFMラジオから流れる歌を呟いていた。

「麻耶は?」
「私ですか、私は特に取り柄もなく英文科です」
「英文科を出てどうしてブライダル?」
芳也は不思議そうに麻耶に問いかけると、チラリと麻耶を見た。
「だって、ブライダル科ってないでしょ?一番得意だったのが英語だったんです。それに何か役に立つかなって。海外挙式とかも興味があったし」
「本当に、ずっとブライダルやりたかったんだ」
芳也は感慨深く言うと、空を見上げた。
「いい天気だな。でも外は暑そうだ……」

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