【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
館内は、白とブルーを基調とした落ち着いた装飾とインテリア、外はオーシャンブルーの海。まるで日本ではないようなその風景に麻耶は目を奪われた。
高い天井には、日の光が差し込み、温かくて穏やかな時間が流れていた。

広々とした廊下を歩き、エレベーターで最上階の5階で降り、大きな扉の部屋を案内された。

一歩部屋に入ると、そこは広々としたリビングが広がり、その向こうには広々とした石畳みのテラスがあった。
どこからどう見ても、スイートであろうその部屋に麻耶は啞然とした。


「すごい……」
呆然とその景色を見ていた麻耶に、クスリと芳也は笑うと、
「ありがとうございます。時間になったらレストランに伺います」
「ごゆっくりお過ごしください。失礼いたします」
後ろで聞こえたその会話に、慌てて麻耶も支配人に「ありがとうございます」と伝えた。

「芳也さん。もう!」
「気に入った?泊まれないのが残念だけど気分だけでもと思って」
テラスから景色を眺めていた麻耶を後ろから抱きしめると、芳也も海に目を向けた。

「予約……してくれたなら言ってくれればいいのに」
「他に行きたい所があったらそこにしようと思ってたのは本当。それに平日でこの部屋が開いていてよかったよ」
軽く睨むように言った麻耶に笑顔を向けながら、芳也は言うとチュとリップ音を立ててキスを落とした。


「他のお部屋も見てきていいですか?」
麻耶は、芳也がわざわざ予約してくれたことに対しての嬉しさと、なぜか落ち着かない気持ちを隠すように、芳也に尋ねた。
「ああ。見ておいで」
慣れた様子で、ソファに座る芳也を見ながら麻耶は隣の寝室やバスルームを見て回った。

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