【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
(確かにそんな不安を口にしたかもしれない……)
「はい……」
「その不安をわしが取り除いてやらねばいかんと思ったんじゃ」
そう言って笑顔を見せた白木に、麻耶は頭を下げた。
「お義父さん!ちょっと待ってください!まるで私が悪者になっているじゃないですか」
そこで苦虫を潰したような父の言葉に、麻耶は顔を上げた。
「麻耶さん、私はむしろ君には感謝をすれど、反対する気は全くない」
「お義父さんがここまで君を気に入っているところを見れば、君の人と成りは確かだろうし……それ以上に、あの頑なに心を閉ざしていた芳也が君のお陰てようやくこの家に戻ってきてくれた。私の今までの過ちを謝る機会を与えてくれた君には感謝しかない。本当にありがとう。そしてこれからも芳也をよろしく頼みます」
「親父……」
その言葉に、麻耶は涙が溢れそうになるのを何とか抑えると、
「もったいないお言葉です。私には誇れるものも何もなく、平凡な家庭で生まれて何も持っていません。こんな私を認めて頂いて本当にありがとうございます。よろしくお願いいたします」
麻耶は零れかけた涙を拭うと、頭を下げた。
「話がまとまった所で、さあ食事を楽しみましょう」
芳也の母の言葉に、和やかに食事会は続いた。