【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
「すごく緊張した……」
麻耶は芳也の部屋のベッドに座ると、大きく息を吐いた。
芳也の部屋は豪邸と言う感じではなく、茶色と白のモダンな部屋だったが、ずっと使用してなかったのだろう、高校の参考書や、サッカーボールなど幾分若い男の子の部屋と言う感じだった。

「大丈夫か?」
麻耶の隣に座ると芳也は麻耶の瞳を覗き込んだ。

「何がなんだか分からなかったけど……。とりあえず無事に認めて貰えたってことで大丈夫ですかね?」
「ああ、麻耶ありがとう」
ゆっくりと芳也の胸の中に抱きしめられて、麻耶はやっと緊張が解けた気がした。

「この部屋、俺がアメリカに行く前と全く変わってない」
「大切に掃除してくれてたんですね」
優しく見上げた麻耶の瞳にそっと芳也は口づけると、
「全部麻耶のお陰だよ。俺がこの場に、この家に戻る機会を与えてくれてありがとう」
「芳也さん……」
唇を重ねようとしたところに、

「芳也!麻耶ちゃんはまだ嫁入り前です。この部屋に一緒に寝ることは認めないわよ」
ドアの向こうから聞こえた母の声に、芳也も麻耶も顔を見合わせて笑いあった。

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