【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
いつもの席に座り、ほとんど変わらないいつものメニューを頼み、考え込むような顔をした麻耶に、
「お姉さんとか?」
「お兄さんしかいない」
「じゃあ、ちょっと道を尋ねられたお礼に、ロビーでお茶とか。あそこのホテルのケーキすごくおいしいし」
無言になった麻耶に、
「はっきりと聞いたら?あの人は誰で、何をしていたか」
麻耶の顔をはっきりと見て言った友梨佳に、麻耶も「ごめん」と謝ると水を一口飲んだ。

「せっかく久しぶりに楽しく飲むはずだったのに。最初からこんな雰囲気で」
肩をすくめるように言った麻耶に、友梨佳は睨むように、
「そんなのは別にいいに決まってるでしょ!それより気になるなら聞く事」
「うん……でも。怖い」
「別に怪しい様子はないんでしょ?」
その問いに、麻耶は言葉に詰まった。
「え?あるの」
「うん……」
麻耶の不安そうな表情に友梨佳も食べる手を止めた。

「どんな風に?」
「決定的な事があったわけじゃないの。でも最近よく考え事をしていたり、電話が良くかかってきて……」
「誰から?」
「わからない。すぐに自分の部屋に行っちゃうからどんな話かも分からないの」
不安から涙が出そうになって、麻耶は無理やり笑顔を作った。

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