【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
「あれ?どこに行くんですか?」
「食事してかえろう」
「本当?嬉しい」
ゆっくりと大きな庭園のある敷地に車を停めた芳也に促され麻耶も車を降りた。
最近驚くことも少なくなったが、趣のある料亭に麻耶はその建物を見上げた。

いつも通り、女将の挨拶があり個室に案内されて、麻耶もお礼を言って和室の席に着いた。
「麻耶、もう慣れたな」
クスクス笑いながら言った芳也に、麻耶はかるく睨むと、
「多少は慣れますよ。接客業してきてよかったです」
「麻耶は食べ方もマナーもきちんとしてるから、すぐに慣れると思ったよ」
外の立派な日本庭園に目を向けながら芳也はそう言うと、目線を戻すと麻耶をジッと見た。

「麻耶、今日は話があるんだ」
先付けが運ばれてきたところで、芳也はゆっくりと言葉を発した。

「はい」
なんとなくその空気を感じていた麻耶は、箸を置くと芳也を見た。
どんな話か想像がつかず、麻耶はドキドキしながら芳也の話を待った。

「宮田の家に戻ろうと思う」
「え?」

全く想像していなかった言葉に、麻耶も言葉に詰まった。


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