【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
「いや、家じゃないな。ミヤタ自動車に入ろうと思う」

「今の会社は?」
なんとか声を出した麻耶に、芳也もじっと麻耶を見たあとゆっくりと言葉を発した。
「副社長が社長に就任して、始が副社長になる」
「館長が?」
「ああ、本当はずっと俺は始に経営に参加して欲しいとは言っていたんだけど、始は現場をまずきちんとするのが俺の仕事だって言ってずっと館長をいろいろな所でやってきてくれた。でも、もう経営に携わってもらってもいい時期だと思う。そしてようやく承諾してくれた。今の副社長も俺の高校の時の先輩で、その人の家も大きな会社だ。いずれその会社に戻ることも決まっている。そうしたら今の会社は始にやってもらいたい。いろいろ細かい部分で名前は残るけど、4月からミヤタ自動車に行こうと思ってる」

「だから社長じゃなくても?なんて聞いたんですか?」
「ああ。あくまで時期社長は兄貴だ。麻耶にどう思うか聞こうと何度も思ったんだ。でも……。この事は小さい頃からの自分にも決着をつけるために自分で決めたかった。ごめん。もしも麻耶に止められたら俺は決断できない気がしたんだ」

じっと芳也を見ていた麻耶だったが、ふわりと笑った。
「芳也さんが、小さい頃からどれだけ努力してきたか館長からも聞いています。お父様の為、健斗さんの為。そのために一生懸命やってきて、ミヤタ自動車を経営するためにその勉強をしてきたんでしょ?健斗さんとは違う方向で。なんで私がそんな芳也さんの決めることに反対をするんですか?バカにしないで下さい」

少し怒ったように言った麻耶に、芳也は驚いた顔をした。
「麻耶……ありがとう」
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