【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
「麻耶ちゃん、ベール下ろすわね」
麻耶はゆっくりと下ろされるベールを見ながら、目を伏せた。
美樹はインカムの指示でカウントを始めた。
なんど嫁役をやっても緊張する瞬間だった。
ゆっくりと目の前の扉が開いて、麻耶はゆっくりと前に進みお辞儀をした。
大聖堂に響く厳粛なパイプオルガンの中、ドレスの裾を踏まないように気をつけながら1歩ずつ祭壇の前にたつ新郎の側へと歩みを進める。
新郎が近くなり、伏し目がちだった瞳を上にあげて、麻耶は動きを止めた。
光を存分に受けたステンドグラスは美しく光輝き、麻耶の数段上の祭壇に建つ真っ白のタキシードに身を包んだ新郎の姿を見て息を飲んだ。
急に動きを止めた麻耶に、父親役のスタッフが新郎に合図を送ると、そっと麻耶の腕を離し手を取った。
たった5段の階段が上がれず、立ちすくむ麻耶に新郎自らゆっくりと階段を下りてくる。
麻耶の1段上で足を止めると、ゆっくりと麻耶の手を取った。
父親役のスタッフに一礼をして、ゆっくりと麻耶を見つめたその人を、麻耶は啞然として見上げた。
「麻耶」
小さな声だったが、はっきりと呼ばれた声に麻耶は心臓が止まるかと思った。
止まったと思った。
ゆっくりと、紡ぎ出された自分の名前をどこか遠くから聞こえるような気がしていた。
(うそ……でしょ?何の冗談?)
麻耶は小刻みに震える体を何とか押さえて、手を引かれるままゆっくりと祭壇へと向かった。
神父の言葉など全く頭に入ってこない。
讃美歌が歌われて、誓いの言葉の順番がやってきた。
そこで神父の言葉が途切れ、麻耶はそっと目を上げた。
麻耶はゆっくりと下ろされるベールを見ながら、目を伏せた。
美樹はインカムの指示でカウントを始めた。
なんど嫁役をやっても緊張する瞬間だった。
ゆっくりと目の前の扉が開いて、麻耶はゆっくりと前に進みお辞儀をした。
大聖堂に響く厳粛なパイプオルガンの中、ドレスの裾を踏まないように気をつけながら1歩ずつ祭壇の前にたつ新郎の側へと歩みを進める。
新郎が近くなり、伏し目がちだった瞳を上にあげて、麻耶は動きを止めた。
光を存分に受けたステンドグラスは美しく光輝き、麻耶の数段上の祭壇に建つ真っ白のタキシードに身を包んだ新郎の姿を見て息を飲んだ。
急に動きを止めた麻耶に、父親役のスタッフが新郎に合図を送ると、そっと麻耶の腕を離し手を取った。
たった5段の階段が上がれず、立ちすくむ麻耶に新郎自らゆっくりと階段を下りてくる。
麻耶の1段上で足を止めると、ゆっくりと麻耶の手を取った。
父親役のスタッフに一礼をして、ゆっくりと麻耶を見つめたその人を、麻耶は啞然として見上げた。
「麻耶」
小さな声だったが、はっきりと呼ばれた声に麻耶は心臓が止まるかと思った。
止まったと思った。
ゆっくりと、紡ぎ出された自分の名前をどこか遠くから聞こえるような気がしていた。
(うそ……でしょ?何の冗談?)
麻耶は小刻みに震える体を何とか押さえて、手を引かれるままゆっくりと祭壇へと向かった。
神父の言葉など全く頭に入ってこない。
讃美歌が歌われて、誓いの言葉の順番がやってきた。
そこで神父の言葉が途切れ、麻耶はそっと目を上げた。