【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
「水崎?」
不意にドアの向こうから声を掛けられて、麻耶はビクンと体が飛び跳ねそうになった。
どう答えていいかわからず、ただ息を潜めた。
「風呂入ってないだろ?入るぞ」
「え?」
有無を言わさず、ガチャッと開いた扉の向こうには、スェットの上下に髪をタオルで拭きながら麻耶を見る芳也がいた。
濡れた髪、チラッと見える鎖骨、少し不機嫌そうな表情がまた色っぽく見えた。

(細身に見えるのに、意外に引き締まった体だったな……)

朝の芳也を思い出して、麻耶はぼんやりと芳也を見ていてハッと今の現状を思い出して顔を背けた。
「おまえ……今日もか?」
呆れたような芳也の声に、
「今日は……外じゃないので……迷惑は……」
じっと麻耶を見た後、ツカツカと芳也はやって来ると、缶チューハイとつまみの入った袋を片手に、もう一方の手で麻耶の腕を取り立ち上がらせると、
「風呂入って来い」
それだけ言うと、ビールやつまみを持って部屋から出て行ってしまった。

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