【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
「お前作ったの?」
「はい。早く座ってください。昨日の夜もあんまり食べてないし私もお腹空きました。簡単な物ですみません。明日からももう少し凝ったものお出しできるようにするので」
少しバツの悪そうに言った麻耶に、芳也は、
「いや、十分だよ。ありがとう」
なんとなく、その香りから素直にお礼を言ってしまい、芳也は慌てて顔を戻した。
そんな芳也に麻耶は目を丸くして、芳也を見た。
「おい、なんだよ?」
ムッとした顔で、箸を手に取った芳也に、

「いや……社長。お礼を言えるんだなって」
「お前俺を何だと思ってるんだ?」
低くなった声音に慌てて麻耶は笑顔を作ると、
「あっ!社長!食べましょうねっ?ねっ?」
慌てて前の席に座った麻耶を見て、「まったく……」と呟いた芳也だったが、目の前の味噌汁に手を付けた。

「あっ、上手い」
「ホントですか?よかった~。うちの田舎の自家製味噌なんです」
「お前味噌もあのスーツケースに入ってたのか?男に浮気されてる現場で?」
「はい!だって美味しいし、おばあちゃんの手作りを置いては家をでられません!」
真顔でビシっと言った麻耶に、とうとう芳也は大声を上げて笑い出した。

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