【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
「おい!」
「はい……」
麻耶はゆっくりと顔を上げて芳也を見上げた。
その少し悲し気な瞳に、今度は芳也が唇を噛んだ。

芳也は少し考えたが、良い言葉が浮かばずジッと麻耶を見た後、大きく息を吐いて麻耶の耳元に顔を寄せ小さく呟いた。
「悪かった。今日の夜はカレーが食べたい」
ぼそりとこの場で訳の分からない事を言った芳也に、麻耶は驚いて目を丸くした。
じっと芳也を見ると、麻耶の顔色を見るようにチラチラと不安気に見ていた。

きっと言ってしまった事を後悔したんだろう。そう思った麻耶はそんな芳也がなぜかかわいくなり、
「大丈夫です。私こそすみません。それとさっきの件は了解です」
微笑んだ麻耶に、ホッと芳也は胸をなでおろした。


「おい、芳也。今のなんだ?」
つい素で話していた事すら気づいていない始の訝し気な表情に、芳也は何食わぬ顔で特に答えなかった。
「どこで水崎さんと知り合ったんだ?」
更に追及の手を休めない始に芳也は「別に」それだけを答えた。

「まあ、いいけど。お前が誰かに素で女と関わる所を、久しぶりに見れたからな」
クスリと笑った始に芳也は大きくため息をついた。



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