【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
「そこまで言ってもらえると嬉しいな」
呟くように言った芳也に、麻耶も何故か恥ずかしくなり無言でカレーを口に入れた。

「社長がこだわったって聞きました。でも……本当にあのチャペルは好きです。いろんなチャペルみてきましたけど、あの大聖堂の長いバージンロード歩くとドキドキするんだろうな……そんなこと思いながら接客してますよ」
ニコリと笑って言った麻耶に、
「ああ。ヨーロッパに視察に行った時のチャペルの結婚式が忘れられなくて。どうしても良いものが作りたかった」
真面目な顔で語る芳也は、本当にこの仕事を大切に真摯に取り組んでいることを麻耶は感じた。

「でも、今週の土曜にフェアで歩くんだろ?ドレス決まった?」
「あっそうだった!初めてあのチャペルでのお嫁ちゃん役なんです」
「お嫁ちゃん……」
麻耶の言葉に芳也はクスクス笑って、言葉を繰り返した。
「スタッフの間では嫁ちゃん役って言うんですよ」
「ふーん」
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