【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス


OPENまで1か月となった土曜日、模擬挙式の為、麻耶は早出だった。

簡単に梅干しのおにぎりとみそ汁を作ると、ラップをかけてテーブルに置き、時計に目を向けると6時を回っていた。

(やばい!今日は7時30分入りなのに!)

急いで自分のおにぎりをキッチンに立ったまま食べていると、「座ってたべろよ」と後ろから声が聞こえた。
その声に、変な場所にご飯が入り麻耶はせき込んだ。
「ゴホっ……おは……よう」
「おい……」
呆れたように、背中を叩かれて麻耶の目の前にミネラルウォーターが差し出された。

慌ててそれを受け取ると、一気に飲み干して麻耶は一息ついた。

「はー。ありがとうございます」
「大丈夫か?」
「はい」
大きく息を吐くと麻耶は照れたように笑って、持っていたおにぎりを口に入れた。
「お前……」
「だって、時間ないんですもん。あっ!社長、簡単ですみません!おにぎりとお味噌汁食べて下さいね!」
それだけ言うと、簡単に茶碗を洗い、麻耶は自分の部屋へと向かった。

「そういえば今日か?なんだっけ?お前の嫁ちゃん役?」
「そうです!そうです」
「俺も今日そのフェア行くから、楽しみにしてるよ」
ニヤリと口角を上げた芳也に、麻耶は心底嫌そうな顔をした。
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