【完】Kiss me 社長の秘密と彼女のキス
「すみません。迷惑かけて……私……?」
どうしてベッドの上にいたのか理解できないようで困惑したような表情で、ゆっくりと麻耶はリビングへとやってきた。

「水崎さん、何か食べられそうですか?少しお腹に入れますか?」
「あれ?館長!」
キッチンに立つ始に驚いたように、麻耶は声を上げた。

「お前、俺が帰ってきたら玄関で倒れてて、医者に診てもらって点滴してもらった。体調はどうだ?」
芳也のその言葉に、麻耶は頭を下げた。
「そうだったんですね……。随分いいです。ありがとうございます。すみません」
「そんな事はいいから、ほら座れ」
芳也は立ち上がって、麻耶の肩を抱くとソファに座らせた。

「始がお粥作ってくれたぞ。食べられるか?食べたら薬飲んだ方がいい」
「はい。少しなら。館長もすみません」
そっと芳也は麻耶の額に手を当てると、「だいぶ下がったな」そう言って麻耶の瞳を覗き込んだ。

「模擬挙式、今度からは終わったら室内に移動に変更するから。風邪をひかせて悪かったな」
「そんな……別に社長が悪い訳じゃないですから」
始がテーブルに置いてくれたお粥を一口咀嚼すると麻耶は芳也を見た。

「あっ、社長はご飯は?食べました?」
「ああ、始が作ってくれたから」

「それならよかった。館長が料理するから、調理道具そろってたんですね」
ホッとした表情で言った麻耶に、始は「女だと思った?」ニヤリと笑ったその言葉に、麻耶はギクッとして慌ててお粥を口に運んだ。
「おいしいです……」
全く違う返事をして、麻耶は話を変えた。
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