With*You








「あれ……っ」




その日の放課後。



女の子達とデートに行くはずの太雅が1人、机で居眠り。



忘れ物を取りに来た私は偶然それを見つけて迷わずに近付いた。




「……あれだけ楽しそうな顔してデートデートって言ってた奴が何してんだか……」




久しぶりにじっと見たその顔は異性の私からしても羨ましいほど整っていた。


ただ……それだけで……




「……っ、」





自然と涙が溢れてくる。



拭おうとした指先は……




「なに泣いてんのー?
そんなにオレが恋しかった?」


「……太雅っ!」




太雅の指先に先を越されて、拭われた。



太雅は起きているし、涙は拭われるし。


私は軽くパニックだ。

だからだろうか。


涙を拭ってくれた太雅のその手をぎゅっと握ってしまったのは……。




「やーっと素直になった」


「……ち、ちが……っ」





指摘されて恥ずかしくなって引っ込めようとしたその手もまた、太雅に握ってしまわれる。





「違わない、だろ?」




じっと見つめられて私もその視線を逸らせず見つめていた。



……ああ、鼓動が跳ね上がって苦しい。




「これでも色々手尽くしてたんだからなー」


「え……?」


「那菜を見つけた日から決めてた。
那菜の隣はオレだけだって」


「……な、に……それ……」




頭が真っ白だ。


それは……どんな意味の言葉なの?



友達……として?





「やっと、那菜に触れた」


「で、でも……今日は女の子達とデート……」


「そんなの断った」




あれだけ楽しそうにしていたのにアッサリ棒に振っていた太雅に訳が分からなくなる。


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