With*You


そんな太雅を肘で小突いてやる。

さっきからサラッと美人、美人って……。

慣れないからやめてほしい……。




「……恋人になった男は信用しないって決めてるの。
だからお互いそんな気は無いけど……
太雅とも今のままでいたい」




進むことも……戻ることも必要ない今のままでいい。




「でもこんな考えの自分を変えたいって思いもあるから……
あたしは長崎くんと向き合うよ」




太雅は薄く笑って相槌を打ちながら話を聞いてくれていた。

なんだか今はそれが無性に有り難く感じて……。




「今日あたし……長崎くんと放課後に会うんだ」


「そっか」


「これで最後にしたいから……」




誰かを疑いながら生きる自分からも……


最後にしたい。




「いってこいっ」




太雅のよく通る綺麗な声は、曇天の冬の空に溶けて消えていった…────────










「……雨……」





そう言えば今日は午後から雨だったと。


頬に滑る雨の感触にそう思い出した。


今朝はバタバタしていて傘も折り畳み傘も持って来ていない。


でも、もうすぐきっと……


長崎くんが来るだろうし。


近くに屋根は無いがこのくらいなら凌げるはず。


そう言い聞かせて放課後、長崎くんと決めた待ち合わせ場所にいる。




「……長崎くん、まだかな?」



雨足が強まってきて、冬の気温と絡まり体温はみるみる奪われていく。


でも、もう少しすれば。


きっと、きっと……




「……来てくれるはず……」





半ば意地になって立ち尽くしていればあっという間に全身ずぶ濡れ。


どうして来てくれないのか、連絡は入れてくれないのか。



また……同じ目に遭っているのだろうか。


考えたくないマイナスなことばかりが膨れていく。



もう……全てがどうでもよくなってきて……



寒さのあまり、膝を折ってしまいそうになった時……
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