主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-③
その後皆で古書を扱う店へ行き、晴明が薦めてくれた本を手に屋敷へ戻った息吹は、式神と一緒に作った料理を運びながら緊張を隠せなかった。
何せ嘘をつくのが苦手で、すぐ態度に出てしまう。
だが夢に見たあの光景や、恐らくそれに関係するであろう主さまの態度――
夫婦になってからこんなに長く離れたことはなく、それだけでも主さまが自分を何かから遠ざけようとしているのが分かった。
「はい、どうぞ召し上がれ」
「わあ、頂きます」
何より息吹の手料理が大好きな朔たちが何の疑問もなく料理を口にしては表情を綻ばせる。
息吹は薬を混入させていない汁物を飲みながら晴明に笑いかけた。
「父様、今日の煮物は会心の出来なんですよ」
「ふむ、それは頂こうか。…うん、美味しいねえ」
晴明も何の疑問もなく料理を食べていて、良心の呵責に耐え切れなくなりそうになった息吹は追加の酒を持ってくると嘘をついて台所へ逃げ込んだ。
「ごめんね、父様…朔ちゃん…輝ちゃん…」
――主さまに会いたい。
けれど主さまが不在の時でなければ夢に見たあの地下まではたどり着けないだろう。
だからこそ、夕飯に薬を混ぜて時を見計らっているのだ。
「風呂にも入ったし、次は何をして遊ぼうか」
晴明が朔たちを飽きさせることなく構ってくれる中、息吹は空になった皿を洗って居間でごろごろしている朔たちを盗み見た。
…欠伸をしている。
普段ならこんな時間から欠伸などすることがないため、薬が効いてきているのが分かった。
「はは、久しぶりに朔たちと遊んでいたら疲れたのかな、眠たくなってきたよ。私も歳だねえ」
「父様、少し横になったら?掛布団持ってきますね」
三人うとうとし始めて、掛布団を身体にかけてやるとすぐ眠ってしまった三人の寝顔をじっと見た後、息吹はそっと屋敷を抜け出た。
――早く幽玄町に戻らなければ気付かれてしまう。
姿を消すことのできる羽衣を手に、急ぎ足で幽玄町に向かった。
何せ嘘をつくのが苦手で、すぐ態度に出てしまう。
だが夢に見たあの光景や、恐らくそれに関係するであろう主さまの態度――
夫婦になってからこんなに長く離れたことはなく、それだけでも主さまが自分を何かから遠ざけようとしているのが分かった。
「はい、どうぞ召し上がれ」
「わあ、頂きます」
何より息吹の手料理が大好きな朔たちが何の疑問もなく料理を口にしては表情を綻ばせる。
息吹は薬を混入させていない汁物を飲みながら晴明に笑いかけた。
「父様、今日の煮物は会心の出来なんですよ」
「ふむ、それは頂こうか。…うん、美味しいねえ」
晴明も何の疑問もなく料理を食べていて、良心の呵責に耐え切れなくなりそうになった息吹は追加の酒を持ってくると嘘をついて台所へ逃げ込んだ。
「ごめんね、父様…朔ちゃん…輝ちゃん…」
――主さまに会いたい。
けれど主さまが不在の時でなければ夢に見たあの地下まではたどり着けないだろう。
だからこそ、夕飯に薬を混ぜて時を見計らっているのだ。
「風呂にも入ったし、次は何をして遊ぼうか」
晴明が朔たちを飽きさせることなく構ってくれる中、息吹は空になった皿を洗って居間でごろごろしている朔たちを盗み見た。
…欠伸をしている。
普段ならこんな時間から欠伸などすることがないため、薬が効いてきているのが分かった。
「はは、久しぶりに朔たちと遊んでいたら疲れたのかな、眠たくなってきたよ。私も歳だねえ」
「父様、少し横になったら?掛布団持ってきますね」
三人うとうとし始めて、掛布団を身体にかけてやるとすぐ眠ってしまった三人の寝顔をじっと見た後、息吹はそっと屋敷を抜け出た。
――早く幽玄町に戻らなければ気付かれてしまう。
姿を消すことのできる羽衣を手に、急ぎ足で幽玄町に向かった。