主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-③
「母様…母様っ!」
息吹の身体を揺すれど声をかけれど、全く反応しない。
横になったまま眠っているように見えるが、瞼はぴくぴく動いていて、指先も時折かじかむように動いていて、朔と輝夜は息吹を取り囲んで声をかけ続けていた。
「なんで…母様はどうなったんだ!?」
「…あの人に連れて行かれたんだ」
――輝夜がぼそりと呟いた。
朔は輝夜の腕を強く掴んで、唇を噛み締めている弟を半ば睨みつけるようにして問うた。
「お前は母様がどうなったか分かっているのか?!」
「…ぼんやりとですが分かります。兄さん、母様は地下に居るあの人に連れて行かれたんですよ。絶対そうだ」
「なんでだ!?」
「分かりません。でも…私もそろそろ身体を貸す時が来たのかも」
全くもって意味が分からない。
まるで自問自答しているかのような輝夜の呟きを聞き逃さなかった朔は、眉を潜めている晴明に縋り付いた。
「お祖父様、母様はどうなったんですか!?父様に知らせないと!」
「使いはもう出してあるよ。だがすぐには来れないだろう。その間に何も起こらなければいいが」
「そんな…!」
――いつも冷静な朔が動揺している様は輝夜の胸にかなり響いて、こんな状況でも冷静でいられるのは自分が少なからず先の未来を見ているからとは言い出せず、すくっと立ち上がった。
「輝夜…?」
「私が父様を呼んできます。多分…大丈夫」
「多分って…大丈夫って…お前何をする気なんだ?」
「兄さん、私は大丈夫。ちょっと待っていて下さい」
「駄目だ、こんな状況でお前をひとりにはできない」
「私は大丈夫なんですよ本当に。だからここで待っていて下さい」
儚く微笑んだ弟。
朔は腕を掴んでいた手を離した。
そうすることが、正しいと思えたから。
息吹の身体を揺すれど声をかけれど、全く反応しない。
横になったまま眠っているように見えるが、瞼はぴくぴく動いていて、指先も時折かじかむように動いていて、朔と輝夜は息吹を取り囲んで声をかけ続けていた。
「なんで…母様はどうなったんだ!?」
「…あの人に連れて行かれたんだ」
――輝夜がぼそりと呟いた。
朔は輝夜の腕を強く掴んで、唇を噛み締めている弟を半ば睨みつけるようにして問うた。
「お前は母様がどうなったか分かっているのか?!」
「…ぼんやりとですが分かります。兄さん、母様は地下に居るあの人に連れて行かれたんですよ。絶対そうだ」
「なんでだ!?」
「分かりません。でも…私もそろそろ身体を貸す時が来たのかも」
全くもって意味が分からない。
まるで自問自答しているかのような輝夜の呟きを聞き逃さなかった朔は、眉を潜めている晴明に縋り付いた。
「お祖父様、母様はどうなったんですか!?父様に知らせないと!」
「使いはもう出してあるよ。だがすぐには来れないだろう。その間に何も起こらなければいいが」
「そんな…!」
――いつも冷静な朔が動揺している様は輝夜の胸にかなり響いて、こんな状況でも冷静でいられるのは自分が少なからず先の未来を見ているからとは言い出せず、すくっと立ち上がった。
「輝夜…?」
「私が父様を呼んできます。多分…大丈夫」
「多分って…大丈夫って…お前何をする気なんだ?」
「兄さん、私は大丈夫。ちょっと待っていて下さい」
「駄目だ、こんな状況でお前をひとりにはできない」
「私は大丈夫なんですよ本当に。だからここで待っていて下さい」
儚く微笑んだ弟。
朔は腕を掴んでいた手を離した。
そうすることが、正しいと思えたから。