主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-③
私とあなたの生きる場所
「朔ちゃん、輝ちゃん、父様が帰って来ましたよ」
人の数え年で六歳と七歳になった次男の輝夜と長男の朔は揃ってひとつの布団に包まっていた。
その手はしっかりと握られ、空いている方の手で目を擦りながら起き上がると、息吹はふたりの頭を撫でて庭を指す。
庭に通じる障子は朝方ほとんど開け放たれる。
百鬼夜行から戻って来た主さまを出迎えるべくすでに雪男が待機していた。
「雪ちゃんおはようっ」
「おう。よう小僧共、親玉が帰って来たぜ」
真っ青な髪と真っ青な目ーーそして容姿は優しげで柔らかな目元に整った鼻梁と笑んだ唇…
美しい容姿は強さの証。
雪男は主さまが屋敷を留守にしている間全ての権限を与えられてこの屋敷を守っている。
「…何事もなかったか」
「あるわけないし。小僧共が騒いで寝なかった位だな」
庭に降り立った主さまーー寡黙を通り越して話すことがあるのかと言う程の無口な男は、ちらりと雪男を見て居間でにこにこしている息吹に歩み寄る。
「主さまお帰りなさい」
頷いて草履を脱いで上がると、まだ寝ぼけている朔と輝夜がにこっと笑った。
それは妻ーー息吹によく似た笑顔で、ふたりの頭を撫でて隣に座った。
「父様お帰りなさい」
「ああ。朔、輝夜は大人しくしていたか?」
「はい。手は離してません」
次男の輝夜は落ち着きがないわけではなく、目を離すとすぐ居なくなってしまうことが多々有るため朔が常に手を握っていた。
当の本人はいつもにこにこしていてまるで女のような顔立ちをしていた。
朔はどちらかといえば主さまに似た顔立ちだが笑うと息吹にそっくりで、主さまを密かに和ませることが多い。
「さあ、みんなでご飯を食べましょう」
人の息吹は三食しっかり食べるため、人と妖の間に生まれた朔と輝夜、そして妖の主さまは食べなくても生きていけるが息吹に付き合う。
夜は百鬼夜行に出るため屋敷に居ない主さまとの時間はとても短い。
だがこれが日常。
これが、彼女と彼らの生きる場所。
人の数え年で六歳と七歳になった次男の輝夜と長男の朔は揃ってひとつの布団に包まっていた。
その手はしっかりと握られ、空いている方の手で目を擦りながら起き上がると、息吹はふたりの頭を撫でて庭を指す。
庭に通じる障子は朝方ほとんど開け放たれる。
百鬼夜行から戻って来た主さまを出迎えるべくすでに雪男が待機していた。
「雪ちゃんおはようっ」
「おう。よう小僧共、親玉が帰って来たぜ」
真っ青な髪と真っ青な目ーーそして容姿は優しげで柔らかな目元に整った鼻梁と笑んだ唇…
美しい容姿は強さの証。
雪男は主さまが屋敷を留守にしている間全ての権限を与えられてこの屋敷を守っている。
「…何事もなかったか」
「あるわけないし。小僧共が騒いで寝なかった位だな」
庭に降り立った主さまーー寡黙を通り越して話すことがあるのかと言う程の無口な男は、ちらりと雪男を見て居間でにこにこしている息吹に歩み寄る。
「主さまお帰りなさい」
頷いて草履を脱いで上がると、まだ寝ぼけている朔と輝夜がにこっと笑った。
それは妻ーー息吹によく似た笑顔で、ふたりの頭を撫でて隣に座った。
「父様お帰りなさい」
「ああ。朔、輝夜は大人しくしていたか?」
「はい。手は離してません」
次男の輝夜は落ち着きがないわけではなく、目を離すとすぐ居なくなってしまうことが多々有るため朔が常に手を握っていた。
当の本人はいつもにこにこしていてまるで女のような顔立ちをしていた。
朔はどちらかといえば主さまに似た顔立ちだが笑うと息吹にそっくりで、主さまを密かに和ませることが多い。
「さあ、みんなでご飯を食べましょう」
人の息吹は三食しっかり食べるため、人と妖の間に生まれた朔と輝夜、そして妖の主さまは食べなくても生きていけるが息吹に付き合う。
夜は百鬼夜行に出るため屋敷に居ない主さまとの時間はとても短い。
だがこれが日常。
これが、彼女と彼らの生きる場所。