主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-③
銀は容赦がない。
ふたりまとめてかかって来られても全く意に介さず焦らず、気負わず、俊敏な動きで縦横無尽に攻め込んでくるふたりの攻撃を華麗に躱してその都度手刀で肩や腕、背中に叩き込んではとうとう輝夜を泣かせてしまった。
「ぎん、俺の弟を泣かしたな…」
「この程度で泣くとは情けない。輝夜、お前には性根が足らん。刀の才覚はあるんだからちゃんと使え」
「私は…戦うのは嫌いなんです…」
何度も手で涙を拭って溢れる涙を堪えようとする輝夜を背中に庇った朔は、守らなければならない者を得て殺気を漲らせた。
こういう時の朔はやばい。
泣き虫な面のある輝夜を自分が守る――その一心で集中力が冴え渡り、銀は侮らないように腰を落として朔の一手を注視していた。
その時――
「朔ちゃん」
「!若葉…危ないから離れて」
幽玄橋に捨てられていたところを銀に拾われてまるで兄妹のように育った人の子。
表情は乏しく言葉数も少ないが、息吹が分け隔てなく愛情を注ぎ、そして朔たちもまたほとんどこの屋敷で一緒に育った。
「若葉、奥に行ってろ」
「輝ちゃん、泣かないで」
「…はい…。若葉、一緒にお饅頭食べませんか?」
「うん、食べよ」
心配してくれた若葉を気遣った輝夜が気を取り直して部屋に上がると、朔は銀を睨んだままぽつりと囁いた。
「父様たちは何をしてるんだ?俺は誤魔化されないからな」
「いや俺もよく知らん。知りたいなら後で十六夜に直接聞け。教えてもらえなかったら、まだ聞くには早いと思え」
――父に直接問い質すのは正直緊張する。
朔は銀に背中を見せないよう後退りしながら輝夜と若葉の後を追う。
「あいつら本当に何やってるんだか」
銀は蔵の方に一瞬目をやると、ぴょんと屋根の上に身軽に飛んで寝転んで昼寝を再開した。
ふたりまとめてかかって来られても全く意に介さず焦らず、気負わず、俊敏な動きで縦横無尽に攻め込んでくるふたりの攻撃を華麗に躱してその都度手刀で肩や腕、背中に叩き込んではとうとう輝夜を泣かせてしまった。
「ぎん、俺の弟を泣かしたな…」
「この程度で泣くとは情けない。輝夜、お前には性根が足らん。刀の才覚はあるんだからちゃんと使え」
「私は…戦うのは嫌いなんです…」
何度も手で涙を拭って溢れる涙を堪えようとする輝夜を背中に庇った朔は、守らなければならない者を得て殺気を漲らせた。
こういう時の朔はやばい。
泣き虫な面のある輝夜を自分が守る――その一心で集中力が冴え渡り、銀は侮らないように腰を落として朔の一手を注視していた。
その時――
「朔ちゃん」
「!若葉…危ないから離れて」
幽玄橋に捨てられていたところを銀に拾われてまるで兄妹のように育った人の子。
表情は乏しく言葉数も少ないが、息吹が分け隔てなく愛情を注ぎ、そして朔たちもまたほとんどこの屋敷で一緒に育った。
「若葉、奥に行ってろ」
「輝ちゃん、泣かないで」
「…はい…。若葉、一緒にお饅頭食べませんか?」
「うん、食べよ」
心配してくれた若葉を気遣った輝夜が気を取り直して部屋に上がると、朔は銀を睨んだままぽつりと囁いた。
「父様たちは何をしてるんだ?俺は誤魔化されないからな」
「いや俺もよく知らん。知りたいなら後で十六夜に直接聞け。教えてもらえなかったら、まだ聞くには早いと思え」
――父に直接問い質すのは正直緊張する。
朔は銀に背中を見せないよう後退りしながら輝夜と若葉の後を追う。
「あいつら本当に何やってるんだか」
銀は蔵の方に一瞬目をやると、ぴょんと屋根の上に身軽に飛んで寝転んで昼寝を再開した。