甘いチョコとビターな彼
『『『辰巳ー!』』』
『おう!』
中学1年の時の話だ。
あの頃の俺は、今の性格とはまるで反対だった。
やる気に溢れていて、友達だって沢山いた。
『昼食べたら校庭でサッカーしようぜ!』
『よし、2ゴールはキメてやる!』
『あ!そーやって辰巳はまた女子からの人気を集めるつもりだなー!』
『あはは!ひがむなひがむな!』
『このヤローーー!』
なんでもないことでじゃれあって、毎日くだらないやり取りを交わす。
でもそんな毎日がとても心地よくて、いつだって楽しくなるのは周りに友達がいたからだ。
『なぁなぁ、今日の放課後さ!俺の家でゲームしようぜ!新しいソフト買ったんだ!』
『お、まじ?行く行く!』
『俺も今日は部活オフだから行く!』
『よっしゃ決まり!辰巳は?』
『…あー、悪い。俺は今日も父さんにチョコ作り教えてもらうことになってるから』
『んー、そっか……』
『ごめんな』
中学の部活は強制じゃなかった。
だから俺は、小さい頃からの日課を続けていただけだった。