甘いチョコとビターな彼


友達だと思っていた。


父さんの作るチョコが美味しいと言ってくれていた。


それなのに……


ダサいと言った。


かっこ悪いと言った。


俺を応援してくれていた。


早く俺の作るチョコが食べたいとも言ってくれていた。


けれど、俺のいないところではそんな風に思っていたんだ。


知らなかったことが一気に脳内を駆け巡っていく。


勉強や運動ができていても、家がチョコレート専門店だとかっこ悪いと言われる。


それだけは、確かに理解できた。


そして同時に、友達という存在に対する嫌な感情が込み上げてきた。


毎日が楽しかった。


あいつらといるだけで、くだらないことも価値があるように見えていた。


けれど、あいつらにとってはしょせん価値のないもののままだった。


こんな気持ちになるなら、友達なんていらない。


俺は、ドアにかけていた手を離して教室から遠ざかった。

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