甘いチョコとビターな彼


『辰巳!おかえり』


家に帰ると、いつものように母さんが俺を出迎えた。


『今日は少し遅かったのね』


『……うん』


『辰巳?どうかしたの?』


『ううん、別に…』


『……辰巳。いつもと同じでお父さんお店の方にいるけど、一緒に行きましょうか』


『……ん』


心配してくれたんだろう。


当たり前だ。
俺はいつも、帰るとすぐに店の方へ行っていたから。


元気のない日なんてなかった。
それほどに、父さんにチョコ作りを教えてもらうことが楽しかったから。


厨房へ足を踏み入れると、いつもと変わらない父さんの姿が俺の視界に映った。

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