甘いチョコとビターな彼


「……それから、自分の家がチョコレート専門店だってことが恥ずかしくなった。
毎日教えて貰ってたチョコ作りも拒否した」


途中までは穏やかな笑みで話していた彼は、全てを話し終えた今は唇を噛み締めていた。


「そのあとは……その友達たちとどうなったの?」


「どうって……普通にいつも通りだよ。
あの時、俺があいつらの会話を聞いてたことはバレてなかったし、そうするのが1番いいと思った。どうせ2年に上がればクラスは離れるし」


「それで、また同じようにチョコの話をしてたの?」


「するわけないだろ。あんな風に思われてたんだ。」


「どうして?」


「は……?」


「どうして、日課だったチョコ作りをやめて、それをかっこ悪いって言った友達と一緒にいたの?」


「っ…」


合わせたはずの瞳が、私が顔を動かすことなくズレた。


彼は視線を下に向けて、また唇を噛み締める。


「俺は……もうかっこ悪くなりたくない」


「…それが、チョコくんが家のことを知られたくない理由?」


「あぁ……」


いつもは真正面から思い切り毒を吐いていた彼が、今は力なく顔を下に降ろしている。


そんな彼を見ているとただ、するりと私の声が溢れ出た。


「……バカみたい」

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