甘いチョコとビターな彼


「梓!」


「ん?あ、ナルちゃんだー。おはよう」


「おはよう……って、そうじゃないよ!」


「どーしたの?」


バレンタイン当日。
待ちに待った彼のチョコを貰う日。


そわそわと落ち着かない気持ちを抱えながら席についていれば、ナルちゃんが忙しない様子でやってきた。


「梓、猪口辰巳と付き合ってるの!?」


「へっ!?な、なんでそんな話になってるの?」


予想もしていなかった言葉に盛大に驚くと、ナルちゃんは振り返るように話し始めた。


「昨日のお昼、梓、いつもみたいに猪口くんのところに行ってたでしょ?」


「うん、行ってたよ」


「その時にこれは絶対に付き合ってるって、彼のクラスから噂が回ってきたんだよ」


「え?な、なんで?」


てっきりもう見慣れたものなのかと思ってたけど、違ったのかな?


「まず4日前。今までに見たことない笑顔で猪口くんが梓に笑いかけてたって、本当?」


「4日前……」


あ、チョコくんがお父さんと和解したって報告してくれた日のことかな?

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