甘いチョコとビターな彼
「うん、確かにあの日の笑顔は今までになかったねぇ」
「!そ、それで、そのあと2日間、梓の姿が見えなくなったと思ったら、昨日また猪口くんと一緒にいて笑い合ってたって……」
「うん、そうだねー」
「や、やっぱり付き合ってるんだね!?」
「え!?だ、だからなんでそうなるの!?」
今の話の流れのどこに付き合ってる要素があったの!?
話の飛躍についていけずに私も慌てれば、ナルちゃんは興奮した様子で身を乗り出してくる。
「だ、だって!学校1クールで笑った顔なんて見せたことがないって有名な猪口くんが、ある日突然特定の女の子に笑いかけてたなんて、もうそれしかないでしょ!?」
「ちょ、ナルちゃん、落ち着いて……って、学校1クール?」
チョコくん、そんな風に言われてたんだ……ふふ。
全然クールじゃないのになぁ。
「確かに笑顔は見せてくれたけど、私たちはただの友達だよ?」
「そ、そうなの?」
「そうそう。ただの友達……」
そう、ただの友達なんだ。
私がチョコくんをどれだけ好きでも、ただの友達。
私が、気持ちを伝えていないから……。
「なんだぁ。梓たちが付き合ってるのかクラスの人たちが確認するために、最近教室にいたって聞いたから絶対そうだと思ってたのに…」
「え……」
あ、もしかして、あの人の多さはそれが原因だったの……?