甘いチョコとビターな彼
チョコくんは、バレンタインに私にチョコを渡すことになってる。
でもそれは、私がチョコくんを脅したから。
彼の家がチョコレート専門店だってことを誰にも言わない代わりに、私が出した条件。
ということは……
「今日が終わったら、友達じゃなくなる…?」
だって、チョコくんは仕方なく私に従っていただけ。
だから今までも、つきまとう私を無下にできなかったんじゃないのかな……?
バレンタインが終われば私との関わりもなくなるから、それまでって……。
「っ、」
そんなの、嫌だよ……。
「あ、梓?」
「ナルちゃ……っ、」
「ホームルーム始めるぞー。早く席つけー」
ためていた感情を全て吐き出すように、私の頬を涙が伝っていく。
「せ、先生!梓が体調悪いみたいなので保健室に連れ行きます!」
「小枝が?大丈夫なのか?」
「大丈夫です。……ほら、梓。行こう?」
「う、ん……」
顔を隠したけど、みんなにはバレちゃっただろうな。
こんな顔、見られたくないのに……。
そう思っていても、私の涙が止まることはなかった。