甘いチョコとビターな彼
「────梓、落ち着いた?」
「……うん、ありがとう。ナルちゃん」
「いいのいいの。でもそっか、2人の間にはそんな事情があったんだね……」
結局授業を休んで、ナルちゃんは保健室で私の傍にいてくれていた。
チョコくんのこと、言わないって約束だったのに言っちゃった……ごめんね、チョコくん。
「確かに、脅したのはよくないよね」
「……うん。よくなかった」
「でも、猪口くんのことを思っての行動だったんでしょ?」
「うん……でも、結局は私の自己満のためだったのかもしれない」
「どうして?」
「チョコくんの笑顔が見たいって気持ちは本当だったけど……それは私の気持ちであって、チョコくんはそんなこと望んでなかったのかもしれない……」
だってチョコくんは、私に救いを求めてたわけじゃない。
だから今まで1度も、彼が私を訪ねに来たことはなかった。
「……梓。今の猪口くんを見ても、そう思うの?」
「え?」
「私もね、噂を確かめるためじゃないけど、梓が隣のクラスでどう過ごしてるのかなって、気になって見に行ってたの」
「うん……」