甘いチョコとビターな彼


「チョコくん……っ、どこにいるの……」


保健室から出ていったあと、ちょうどチャイムが鳴って廊下は教室から出てきた人で溢れていた。


チョコくんのクラスには1番に行ったけれど、なぜか彼の姿はそこになかった。


その時、


「なぁ、さっきの見た?」


「あー、猪口だろ?中庭に呼び出されてたよな」


「あの女子も勇気あるよな。校舎から丸見えな場所選ぶなんて」


「まぁ、猪口も前より話しかけやすい雰囲気になったからなー。いけると思ってるんじゃん?」


「っ、!」


今いるのは、2階の階段から1番遠い廊下。


中庭に行くには、今いる2階から階段で1階に降りて、まっすぐ続く職員室の前を通って、校舎同士を結ぶ外通路まで行くと辿り着くことができる。


お願い、間に合って!


季節は寒いはずなのに、着ているセーターを暑く感じるほどの速さで、私は廊下を駆けて行った。


「……っ…はぁ、はぁ……っ」


1階まで来た!職員室の通路も、あと半分っ……!


「おい!廊下は走るな────って、猪口!?お前、体調は大丈夫なのか!?」


「せ、先生っ……はぁ……」


目の前に現れた先生に、一瞬速度が緩んだ。


「────猪口くん!」

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