夢うつつ
陸
数日後、菜月はバイトを辞めると。
「何故?」
「しばらく無断欠勤が続いたからだと思います。今月いっぱいで終わりなんです」
笑いながら言う。
「菜月、今日は帰りなさい」
「あ、はい」
今日もあまりいてほしくない、つまり素性を掴み、それが厄介だったという事だ。
「師父……」
連絡先くらい聞きたかった。
「私からは何も言わないよ」
意地悪げに返された。
「紅蓮様!!」
菜月がいなくて良かったと思った。唐突に疾風が本当の名前を呼びながら入ってきたのだ。
「疾風、ここでは……」
「も……申し訳ございません。朗報です!」
「は?」
陽光こと啓治もいぶかしんで顔を出した。
「やっとご返事がいただけたんです!」
「何の?」
もう、分からない。
「咲枝様を通じて樹杏殿からお話が!」
「何だって同じ支社内なのにわざわざ京都通すわけ?」
啓治が後ろで不思議そうに言う。
「だから厄介なんだよ、あの男は。意外に根回し上手だからね」
ひそひそと話す二人の会話を聞きながら、思う。祖母を通しての話となったらただ一つ、そして朗報という事は……。
「明日、東堂のホテルにてと!」
つまり承諾なのだ。奈落に落ちる感覚がした。
「紅蓮!」
啓治が驚いて声をかけてきた。
「何故?」
「しばらく無断欠勤が続いたからだと思います。今月いっぱいで終わりなんです」
笑いながら言う。
「菜月、今日は帰りなさい」
「あ、はい」
今日もあまりいてほしくない、つまり素性を掴み、それが厄介だったという事だ。
「師父……」
連絡先くらい聞きたかった。
「私からは何も言わないよ」
意地悪げに返された。
「紅蓮様!!」
菜月がいなくて良かったと思った。唐突に疾風が本当の名前を呼びながら入ってきたのだ。
「疾風、ここでは……」
「も……申し訳ございません。朗報です!」
「は?」
陽光こと啓治もいぶかしんで顔を出した。
「やっとご返事がいただけたんです!」
「何の?」
もう、分からない。
「咲枝様を通じて樹杏殿からお話が!」
「何だって同じ支社内なのにわざわざ京都通すわけ?」
啓治が後ろで不思議そうに言う。
「だから厄介なんだよ、あの男は。意外に根回し上手だからね」
ひそひそと話す二人の会話を聞きながら、思う。祖母を通しての話となったらただ一つ、そして朗報という事は……。
「明日、東堂のホテルにてと!」
つまり承諾なのだ。奈落に落ちる感覚がした。
「紅蓮!」
啓治が驚いて声をかけてきた。