夢うつつ
参
四条院の集まりだ。ちい姫も来るものだと思っていたが、樹杏のみの参加だった。
「自慢の妹君は?」
南原 知己が率先して聞いていた。
「妹は体調が悪いため、家で休んでいます」
それだけ言って一礼していた。そしてさっさと一人帰路についていたのだ。
「身体が弱いってのは本当の話さ。杏里にも確認した。だからだろ、あの人事は」
それだけでないはずだ。紅蓮にちい姫を会わせたくないのだ。
「身体が弱いが結構奔放なところがある娘っ子だとさ。意外にもお前とホントお似合いかもよ?」
どっからその情報を聞きつけたと言いたくなる。知っているのは紅蓮と当主夫婦、それから樹杏だけだと思っていた。
「さて、話を始めようか」
聖のその一言で周囲は真顔になっていく。
「まだ漁っているのか?あの色魔は」
「のようです。ちい姫様が戻られたので、少しはおさまるのではないかと楽観的意見があります」
「理由は?」
「これは南原殿の方が詳しいかと」
その言葉に一斉に知己へ視線が注がれた。
「一番下の娘っ子の前ではただの好々爺だったって話、杏里が言ってただけさ。ホントのところは樹杏さんにでも聞いてみないと分からんさ」
「樹杏に聞けるとでも?」
「俺から聞いとく?別に構わないさ」
「そうしてくれ。私も聞きたい」
ちい姫の前でだけは好々爺、それが引っかかる。それだったら同じように子供の樹杏も杏里も見ていないはずなのだ。
「そのあとだ。計画を変更するか否かは」
その一言で解散になった。
「昨日、さっさと帰ったのはまずいと思うさ」
翌日、知己が樹杏に声をかけていた。
「妹の体調が悪いのでと、確かどなたかに断って帰りましたが」
その相手は元則だった。あとでしれっと答えてくるあたり最悪かもしれない。
「そんなに悪いわけ?」
「いえ、昨日の夜で熱は下がったので今日から普通に学校に通っています」
「たまにで良いさ、俺も久し振りにちい姫見たい」
「だったら今日来るか?」
いきなり気安い口調へ変わった。
「こっちの事、聞けるのがいないからどうも引っ込み思案気味になってる」
「琴織にいんの?」
「琴織はちょっと……杏里も移動になると思ってなかったし」
「あぁ……ちい姫が気をつかったか」
「そういう事だ」
「それ以外に理由は?」
「なくもない」
つまり紅蓮のことだろう。聞いていて面白くない。
「お、紅蓮そんな仏頂面してんなや」
気楽そうに知己がこちらへ手をあげてきた。一応は知己の甥っ子になるわけだから、わざと話しかけてきたのだろう。だがその瞬間、樹杏は一礼をして別の場所へ向かっていく。
「おいおい、未来の義弟にもう少し愛想よくしろや」
その言葉に苦笑するしかない。
「まだ、流動的なんだ」
「そのあたりの話も聞いたさ。可愛い妹に苦労をかけさせたくないみたいさ」
「苦労かぁ……」
ただ傍にいたい、それだけだ。
「ちい姫に軽く聞いてくるか?約束の話」
「何で!?」
「そりゃ、餓鬼のころちい姫に直接聞いたに決まってんだろ?国外に俺だっていた事あるわけだし?ただ、あのあたり樹杏さんは微笑ましそうに笑ってた。逆に四条院側で反対意見があったみたいだぞ」
「……そうか」
「で、ちい姫はかなりショックだったみたいだ。だから無効な話として忘れている公算大」
四条院側の反対、それが重くのしかかった。
「尚更保護者として反対するわけだ」
「だろうなぁ……ましてや次の当主、どれ位妹が苦労するかなんて分からんだろ」
身体も弱いしと続けてくる。
「最後に会ったのいつだよ」
「……約束してから会ってない」
ませた子供だと言われようが、ちい姫と一緒にいたいと思った。それは今でもそうだ。
「忘れてたらしゃれにならんぞ。今日聞いてくるさ」
「あぁ」
次の日まで不安が頭をよぎる。
「自慢の妹君は?」
南原 知己が率先して聞いていた。
「妹は体調が悪いため、家で休んでいます」
それだけ言って一礼していた。そしてさっさと一人帰路についていたのだ。
「身体が弱いってのは本当の話さ。杏里にも確認した。だからだろ、あの人事は」
それだけでないはずだ。紅蓮にちい姫を会わせたくないのだ。
「身体が弱いが結構奔放なところがある娘っ子だとさ。意外にもお前とホントお似合いかもよ?」
どっからその情報を聞きつけたと言いたくなる。知っているのは紅蓮と当主夫婦、それから樹杏だけだと思っていた。
「さて、話を始めようか」
聖のその一言で周囲は真顔になっていく。
「まだ漁っているのか?あの色魔は」
「のようです。ちい姫様が戻られたので、少しはおさまるのではないかと楽観的意見があります」
「理由は?」
「これは南原殿の方が詳しいかと」
その言葉に一斉に知己へ視線が注がれた。
「一番下の娘っ子の前ではただの好々爺だったって話、杏里が言ってただけさ。ホントのところは樹杏さんにでも聞いてみないと分からんさ」
「樹杏に聞けるとでも?」
「俺から聞いとく?別に構わないさ」
「そうしてくれ。私も聞きたい」
ちい姫の前でだけは好々爺、それが引っかかる。それだったら同じように子供の樹杏も杏里も見ていないはずなのだ。
「そのあとだ。計画を変更するか否かは」
その一言で解散になった。
「昨日、さっさと帰ったのはまずいと思うさ」
翌日、知己が樹杏に声をかけていた。
「妹の体調が悪いのでと、確かどなたかに断って帰りましたが」
その相手は元則だった。あとでしれっと答えてくるあたり最悪かもしれない。
「そんなに悪いわけ?」
「いえ、昨日の夜で熱は下がったので今日から普通に学校に通っています」
「たまにで良いさ、俺も久し振りにちい姫見たい」
「だったら今日来るか?」
いきなり気安い口調へ変わった。
「こっちの事、聞けるのがいないからどうも引っ込み思案気味になってる」
「琴織にいんの?」
「琴織はちょっと……杏里も移動になると思ってなかったし」
「あぁ……ちい姫が気をつかったか」
「そういう事だ」
「それ以外に理由は?」
「なくもない」
つまり紅蓮のことだろう。聞いていて面白くない。
「お、紅蓮そんな仏頂面してんなや」
気楽そうに知己がこちらへ手をあげてきた。一応は知己の甥っ子になるわけだから、わざと話しかけてきたのだろう。だがその瞬間、樹杏は一礼をして別の場所へ向かっていく。
「おいおい、未来の義弟にもう少し愛想よくしろや」
その言葉に苦笑するしかない。
「まだ、流動的なんだ」
「そのあたりの話も聞いたさ。可愛い妹に苦労をかけさせたくないみたいさ」
「苦労かぁ……」
ただ傍にいたい、それだけだ。
「ちい姫に軽く聞いてくるか?約束の話」
「何で!?」
「そりゃ、餓鬼のころちい姫に直接聞いたに決まってんだろ?国外に俺だっていた事あるわけだし?ただ、あのあたり樹杏さんは微笑ましそうに笑ってた。逆に四条院側で反対意見があったみたいだぞ」
「……そうか」
「で、ちい姫はかなりショックだったみたいだ。だから無効な話として忘れている公算大」
四条院側の反対、それが重くのしかかった。
「尚更保護者として反対するわけだ」
「だろうなぁ……ましてや次の当主、どれ位妹が苦労するかなんて分からんだろ」
身体も弱いしと続けてくる。
「最後に会ったのいつだよ」
「……約束してから会ってない」
ませた子供だと言われようが、ちい姫と一緒にいたいと思った。それは今でもそうだ。
「忘れてたらしゃれにならんぞ。今日聞いてくるさ」
「あぁ」
次の日まで不安が頭をよぎる。