政略結婚はせつない恋の予感⁉︎

「……なに話してたんだよ?」

いつの間にか、ふてくされた顔で将吾さんが立っていた。

「あなたが小さい頃、わたしが仕事で外国に行かなくちゃならなかったとき、
『Mom,don’t leave me alone!〈ママ、ボクをひとりぼっちにして置いてかないで!〉』
って言って、わたしにしがみついて大泣きしたこととかよ」

義母(かあ)さまはしれっと言った。
わたしはなにかの折に使えるな、と黒い笑みを浮かべた。

「な…な…なに言ってんだよっ!? かあさん!」

将吾さんは逆上した。

「『かあさん』じゃなくて『マイヤさん』よっ」

お義母さまが麗しいお顔を(しか)める。

「う、うるせぇっ!」

将吾さんはわたしの腕をがしっ、と掴んで、

「おい、彩乃、ちょっと来いっ!」

ダイニングルームの外へ引っ張って行く。

「将吾、彩乃さんをどこへ連れて行く?
おれも話したかったのに……」

社長の声がだんだん遠ざかっていく。

< 100 / 507 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop