政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
「……なに話してたんだよ?」
いつの間にか、ふてくされた顔で将吾さんが立っていた。
「あなたが小さい頃、わたしが仕事で外国に行かなくちゃならなかったとき、
『Mom,don’t leave me alone!〈ママ、ボクをひとりぼっちにして置いてかないで!〉』
って言って、わたしにしがみついて大泣きしたこととかよ」
お義母さまはしれっと言った。
わたしはなにかの折に使えるな、と黒い笑みを浮かべた。
「な…な…なに言ってんだよっ!? かあさん!」
将吾さんは逆上した。
「『かあさん』じゃなくて『マイヤさん』よっ」
お義母さまが麗しいお顔を顰める。
「う、うるせぇっ!」
将吾さんはわたしの腕をがしっ、と掴んで、
「おい、彩乃、ちょっと来いっ!」
ダイニングルームの外へ引っ張って行く。
「将吾、彩乃さんをどこへ連れて行く?
おれも話したかったのに……」
社長の声がだんだん遠ざかっていく。