政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
「スウェーデンとか北欧の人たちって、日本人のわたしたちが考えられないほど、春っていうか夏が待ち遠しいんでしょ?
……そういうのがあふれてる歌だね」
わたしはしみじみ言った。
「極夜の冬は昼過ぎには暗くなるからな。鬱陶しいぞ。統計では自殺者も増えるみたいだし。
その反動で白夜の夏至祭は、びっくりするほど開放的になる。別の意味で厄介になるけどな」
将吾さんは顔を顰めた。
「ABBAの ♪ Summer Night City なんかの歌詞も、白夜に弾けちゃってすごいもんね」
同じスウェーデンの男女四人組の歌を思い出した。
「あぁ……夜中に公園でセックスして、昼間は疲れて眠りこける歌な」
……歌詞の一部だけを抜き出すな。
「……ところで」
将吾さんはわたしの顎をくいっ、と持ち上げた。
あれ?……また、彼の香りが変わっている。
今度はレザー系の荒々しい、なんだかドキドキさせるセクシーな匂いだ。
「公園で、とは言わないが……おれたちはいつ、キスから先に進めるんだ?」
将吾さんのカフェ・オ・レ色の瞳から、色気がダダ漏れてる。
……ま、まずい。
話があらぬ方向に向かってしまった。
あれから、終業後に毎日「副社長のプライベートルーム」でわたしはキスを「補充」させられていた。
プライベートルームは簡易なベッドのため、図体のデカい将吾さんだけでもかなり窮屈そうなので、わたしは押し倒されることなく、なんとか貞操を守れていたのだが……
……今、この部屋の奥には、セミダブルのベッドがある。
「ちょ…ちょっと……まだ……」
わたしは後ずさりする。
「大丈夫だ、おれに任せればいい」
将吾さんは、そんなわたしのことなどお構いなしに間を詰めてくる。
「それに、おれは胸の大きさなどは気にしない」
……失礼なっ!
たぶん、抱きしめたときに勝手に、わたしの胸がささやかなんだろうと思ったのかもしれないが、寄せて上げてトリンプだったらCカップだから!
「安心しろ。もし小さければ、おれが揉んでそれなりにしてやる」
だから、トリンプだったらCカップだってばっ!