政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
やっぱり…そろそろ…ちゃんと…言わなければ。
「あ…あのね……将吾さん……お願いがあるの」
とうとう、将吾さんがわたしを捕まえた。
ふわりと抱きしめ、ハーフアップにしたわたしの髪をやさしく撫でる。
どうもこの人は、髪を下ろした方が好みらしい。
あっ……また香りが違う。
今度は、甘ったるい濃厚なバニラの香りが彼を包んでいた。
「なんだ?……やってもらいたい体位でもあるのか?」
将吾さんが耳元で囁く。
……先刻から、な、なにを言ってんのよっ。この真っ昼間にっ!
「リクエストすれば善処するぞ」
……企画書の決済じゃないんだからっ。
「真面目な話です」
わたしは将吾さんの腕の中で言った。
「わたしはあなたの子どもをちゃんと産みます」
将吾さんはわたしを抱きしめる腕に力を込めた。
わたしの髪を撫でる手が、一層やさしくなる。
そして、心を決めて告げた。
「……ただし、人工授精で産みたいのです」