政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
ところが突然、不機嫌だった顔を潜めて、
「……昨日は、急に帰って悪かった」
将吾さんが殊勝にも謝る。わたしの髪を搔き上げていた手も下ろされた。
わたしは首を振った。
わたしが常識知らずなことを申し出たのだ。
決して、将吾さんが悪いわけじゃない。
「おまえ……まさか、マリアさま以来の処女受胎を狙ってるわけじゃないよな?」
将吾さんはちょっと呆れたように訊く。
……とっくに処女じゃないし。
わたしはまた、首を振った。
「なにか……理由というか……事情があるんだろ?」
将吾さんのカフェ・オ・レの瞳が、わたしのヘイゼルの瞳を覗き込む。
わたしは目を伏せてしまう。