政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
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その週末、父から結納の日が決まった、と告げられた。あのお見合いのときのホテルで、今月の半ばに執り行われることになった。

お仲人は、本来ならばこのお見合いのお世話をしてくださった、あさひ証券の水島夫妻になるところだ。

だが、親戚のおじさまとおばさまだといえど、グループ内では形式上傘下の会社の社長とその妻となる。また、結納の相手が世界的な規模のグループの令息であり副社長だ。
だから、お仲人には経済界の親睦団体の会長夫妻が快く引き受けてくださったらしい。

将吾さんから父へは、今のところ、なんの「変更」の申し出もないようだ。

あれから……わたしたちは出会った頃のような、つまりお見合い直後のような、よそよそしい関係に戻った。

わたしの左手の薬指には、まだ毎日エンゲージリングのピヴォワンヌが輝いているが、このリングを受け取ったときの高揚感はかけらもなくなった。

将吾さんも一応、わたしがお返しで贈ったグランドセイコーを毎日つけてはいるが、新品の黒革バンドを腕に馴染(なじ)ませるためだと思う。

わたしのおじいさまが一目置いたことで、この時計が重鎮たちにかなり効き目があることを悟ったのであろう。

……とてもこんな冷え冷えした空々しい関係では、いくら政略結婚でも()たない。

将吾さんのことだから、結納のときに自分の口からみんなに「話す」ことでケジメをつけるつもりなのかもしれない。


わたしとの婚約を……解消することを。

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