政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚


その後、ホテルの中のミシュラン星が輝くフレンチレストランで、両家揃っての会食となった。

そのレストランへの移動中、わたしはお義母(かあ)さまに自分でラッピングしたプレゼントをそっと渡した。

去年のクリスマスに、将吾さんのお宅にお邪魔した際に、わたしはなにも持たず行ったことが気がかりだった。
将吾さんがお正月にうちに手土産で持ってきた、勘兵衛のテリーヌ・オ・ショコラがうちの家族に(「海洋派」の裕太ですら)大好評だったからである。

短いおつき合いだったけれど、美しくて聡明で、そして仕事と家庭を両立させてきた彼女は、同じ女性として尊敬に値する存在だと思う。
だから、今日でお会いするのは「最後」になるとは思うけれど、わたしなりの出会えてよかったという「感謝の気持ち」を形で表したかった。


お義母さまとわたしは最後尾を歩いていた。

彼女は、開けていい?と目で促した。
わたしは肯いた。

ラッピング、といっても巾着にリボンで結んだだけなので、歩いている最中でも簡単に中を見られる。彼女が中から取り出したのは、無印良品のCDだった。もちろん、スウェーデン・トラディショナルの曲が収録された「BGM8」だ。

「ありがとう!……これは、だれのCDかしら?」

彼女は表情豊かに目を丸くして尋ねた。

「それは、聴いてみてのお楽しみです」

わたしはいたずらっ子っぽく笑った。
たぶん……将吾さんみたいだっただろう。

< 162 / 507 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop