政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚


夕食は、一階のダイニングルームでこの家で働く人たちと一緒にいただく。
みんな同じメニュー(今日はビーフシチューだ)を食べる様子は、将吾さんが言うようにまさに「大家族」だ。

確かに、中央にでーんと据え置かれた十数人は座れる古式ゆかしき縦長のテーブルに、家族三人だけというのは寂しいもんね。

「家長席」のお義父(とう)さまが、今日のゴルフがいかに寒かったかを力説されていた。

……わたしは冬場の寒風吹きすさぶゴルフ場なんかには、一ミリたりとも近づきたくない。

「彩乃はゴルフできるんだってな?」

不意に、将吾さんが余計なことを口走った。

「就職してからはコースどころか、練習場にすら行ってませんので」

わたしは、ほほほ…と笑っておいた。

「そうか……じゃあ二月のコンペ、彩乃さんも参加で決まりだな!」

お義父さまはうれしそうに言った。

「いやぁー『娘』とのゴルフって夢だったんだよなぁ」

乙女のように頬を染めている。

……おい、人の話聞いてるかっ!?

しかも、二月のゴルフ場って一年中で一番寒い、厳寒じゃないかっ!

ユニクロの極暖の上にカシミアのセーター、もこもこのパーリーゲイツの揃いのダウンジャケットとダウンスカートとダウンレッグウォーマーで武装して、さらにカイロをお腹と背中に装着しても冷え性なわたしにはまだ寒いんだぞっ。
お昼にクラブハウスで一杯ひっかけないと、とてもじゃないけど後半回れないんだぞっ!

……冗談じゃないっ。わたしは絶対に行かないからなっ!

「み…みなさんを究極のマナー違反『スロープレイ』にさせてしまいますので、わたしはご遠慮申し上げますわ」

わたしはもう一度、ほほほ…と笑っておいた。

そして、心の中で、どうか大雪でゴルフ場がクローズになりますように、と学生時代の礼拝の時間には考えられないほど熱心に、父と子と精霊にお祈りした。

< 171 / 507 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop