政略結婚はせつない恋の予感⁉︎

将吾さんはきれいにベッドメイキングされたベッドスプレッドとブランケットを乱暴に引き剥がしたわりには、わたしをシーツの上に穏やかに横たわらせた。

「……茂樹に楽させたいんだったら、おまえがもっとおれの秘書らしくなれ。でないと、あいつはずっと秘書室長のままだ」

わたしの上に馬乗りになった将吾さんが言った。

「えっ、わたし、寿退職するんじゃないの?」

将吾さんを見上げて訊いた。

「専業主婦になりたければなってもいいぞ。
でも、この家でなにをするんだ?たぶん、一日中ヒマだぞ?」

……それはもっともなことだ。
ここの家事はすべてハウスキーパーさんたちがやってくれている。

「茂樹はC大の法科大学院を出て司法試験に合格し、弁護士資格を持っている」

わたしは驚いて目を丸くする。

「おれとしては、早くあいつの能力を活かせる社外との契約関係や社内でのコンプライアンス関係を統括する役職に就いてもらいたいんだ」

……確かにそうよね。

わたしは将吾さんの下で深く肯いていた。

「おまえ、そろそろおれについて得意先へ行くか?」

「だったら、髪染めないといけないね」

わたしは自分の派手なオリーブブラウンの髪を横目で見た。

「……バカか……絶対、染めるんじゃねえぞ」

将吾さんがわたしの髪を右手でやさしく梳く。

「将吾さんはわたしのこと、怒ってたんじゃなかったの?」

なんだか、なし崩し的になってるような気がしてきた。

……わたしの「提案」に対しては、どう思ってるのだろう?

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