政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
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わたしたちは結婚式が執り行われる教会(チャペル)へ入った。

わたしは新郎新婦の両方の親戚なのでどちら側でもいいが、将吾さんが慶人側の招待客なので新郎側の席に向かう。

ホテルの結婚式専用「教会」とはいえ、さすがこの国を代表する老舗ホテルである。
結婚式場によくある浮わついた急ごしらえなところがまったくなく厳粛な感じがする。
それでいて、側面のステンドグラスから差し込む太陽の光が、チャペル全体をやわらかく包んでいる。

「よく見とけよ。三ヶ月後、あそこに立つのはおれたちだ」

将吾さんが、正面にある神父さまの聖書台の方を見てにやりと笑った。
わたしも微笑みながら彼を見た。

「将吾さんこそ、本番で粗相をしないようにちゃんと見ててよ?」

わたしたちの結婚式と披露宴が四月末に決まった。五月の大型連休に合わせて新婚旅行へ行くためである。

TOMITAの海外支社を統括する将吾さんは、なかなかまとまった休みが取れない。
新婚旅行(ハネムーン)に理解のある欧米はともかく、五月の上旬に大型連休のある日本や中国に合わせておいた方がなにかと都合がいい。

旅行先は、イギリスの王子やハリウッド俳優たちも選んだ「インド洋の真珠」と呼ばれる超高級リゾート地である。

将吾さんがそこに決めたのだが、時差もそんなに気にすることなく、プライベートアイランドを貸し切ってのんびりできるそうだ。
毎日、仕事に忙殺されてるから、せめてこんなときくらい、彼にはゆっくりしてほしいと思う。

インドア派のわたしにしても、逆に観光巡りとかに引っ張り回されるより、ずっといい。

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