政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
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披露宴が賑々しく始まった。
わが国を代表する老舗ホテルの、芸能人なんかの派手な結婚式でテレビ中継が入ったりする、美しい鳥の名が付いた一番大きくて広い会場だ。
わたしと将吾さんも、四月にこの会場で披露宴を行う。

「いくつあるんだ、テーブル?まさか全部をキャンドルサービスで回るんじゃねえだろうな?」

将吾さんがずらりと並んだ丸いテーブルを見て、心底げんなりした顔をしている。
明日(ほんとは三ヶ月後)は我が身、だからだ。

「まさか。軽く見ても千人以上いるよ。キャンドルサービスだけでもうお開きになるじゃん」

……そんなの、さすがにわたしもうんざりだ。

高砂席の慶人と蓉子が、はるか前方に見える。
司会に雇った某テレビ局のアナウンサーがなにやらしゃべっているが、この周囲のテーブルはだれも聞いちゃいない。
次々とサーブされる素晴らしいフランス料理を前に、みな舌鼓を「達人」のように連打している。

わたしたちのテーブルにはほかに、再従兄(はとこ)の大地とその奥さんの亜湖さん、そして、わたしの弟の裕太がいた。

将吾さんに大地や亜湖さんはさすが非の打ち所がないテーブルマナーだった。
しかし、成人式のときにオーダーしたスーツを着た裕太がいちいち「すっげぇー、マジでヤバいくらい超うめぇー」を連発するので、ものすごく恥ずかしかった。

……そりゃあ、名物のローストビーフや某国の女王陛下の名前がついた車海老のグラタンは、お世辞抜きで美味(おい)しかったけれど。

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