政略結婚はせつない恋の予感⁉︎

「蓉子、おめでとう!
子どもの頃から、あんなに好きだった慶人と結婚できて、本当によかったね」

「彩乃!」

蓉子はクラシカルだったウェディングドレスとは一転して、大きな会場で映えるマゼンダピンクのプリンセスラインのシルクタフタドレスを、まるで薔薇の花が咲いたかのように華やかに(まと)っていた。

彼女はわたしの顔を見るなり涙ぐんだ。

「……ありがと」

高砂席の周りは会社関係の来賓の方々ばかりだった。緊張感でいっぱいの中、突然、姉妹のように育ったわたしの顔を見て、少し気が緩んだのであろう。

わたしは子どもの頃みたいに、蓉子の背中をよしよし、という感じでぽんぽんした。

「よう、水島……おめでとう」

将吾さんが大学のゼミ仲間だった慶人に話しかけた。

「あぁ、富多か……ありがとう」

慶人はフロックコートから光沢のあるライトグレーのタキシードになっていた。

「すっかり、顔つきが穏やかになっちまったな」

大学の頃の慶人の素行をガチで知っているであろう将吾さんがにやり、と笑った。

「まぁね……おまえも彩乃と結婚するからには、しっかりと落ち着いてくれよ」

慶人は将吾さんをまっすぐ見据えて、釘を刺した。

「彩乃は、僕と蓉子にとっては『姉妹』だからね。彩乃を泣かすようなことだけは絶対にやめてくれ」

そういえば、慶人は蓉子を通じて、この結婚は勧められないと言ってたことを思い出した。

……理由は「女性関係」だ。

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