政略結婚はせつない恋の予感⁉︎

だけど……会社で秘書をして、今はプライベートでも同居しているから、彼のスケジュールはほぼ一日中把握できているけれど、将吾さんの浮いた話は聞いたことがなかった。

……誤解だった、誠子さんのことくらいか。
それも、秘書仲間の七海ちゃんは初めから誠子さんは『まったく相手にされてないみたい』って言ってたっけ。

「副社長になって、仕事嫌いの親父の『社長の仕事』まで振られてるってのに、そんなヒマあるかっ!」

将吾さんは腕を組んで憤慨した。

「悪い、悪い……確かにそうかもな」

慶人が、ぽつりとつぶやいた。

「……顔つきが穏やかになったのは、むしろ、おまえの方みたいだから」


また、不穏な気配を感じたので後ろを窺うと、大地たちが団体でこちらに向かってくるではないか。当然、中には海洋もいる。

焦ったわたしは、また足元をふらつかせた。
将吾さんの腕にがっちり支えられる。

「あ…ごめん」

彼の腕の中で謝った。

「彩乃、顔が赤いぞ……熱でもあるのか?」

将吾さんがわたしの額に手を当てる。

「頬も熱いしな」

わたしの頬を撫でて、確認する。

「……おまえら、他人の披露宴の高砂席でなにやってるっ!今日の主役はおれたちだっ!
もう同棲してるって聞いたぞっ。うちに帰ってからやれっ!!」

滅多に声を荒げない慶人が怒鳴っていた。

「彩乃、なんだぁ、ラブラブじゃないの。
……あたし、心配して損しちゃった」

蓉子は脱力していた。


………いやいやいや。
「同棲」ではなく「同居」です。
それに、れっきとした「政略結婚」でございます。

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