政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
「……びっくりさせんなよ」
ふわっと、懐かしい彼の匂いがした、と思ったら……次の瞬間、海洋に抱きしめられていた。
「飛行機が遅れて、ギリギリに着いたら」
ぴったりと隙間なく重ねられた身体から発せられた海洋の声が、自分の中から聞こえる気がした。
「彩の結婚が決まったって、太陽が言うから」
……だから、チャペルでわたしのこと、ガン見してたわけね。
物心がついたときには、すでに海洋と出会っていた。幼い頃からのわたしの夢は海洋と結婚して、海洋の子どもを産んで育てることだった。
それ以外に望むことはなにもなかった。
彼の遺伝子をわたしの子宮を使って遺すことが、わたしがこの世に生まれてきた使命であると、本気で信じきっていた。
それが無理だとわかったとき……わたしたちは別れた。
ただ海洋だけをひたすらに見つめていた、あの頃のわたしが甦ってくる。
吸い寄せられるように、彼の首の後ろに手を回してしまう。わたしを抱きしめる海洋の腕に、力が篭った。
「……おれから、逃げるな」