政略結婚はせつない恋の予感⁉︎
わたしは、海洋の首の後ろに回していた手を下ろした。
そのとき……わたしの左手の薬指にきらきら輝く、お気に入りのピヴォワンヌが目に入った。
海洋も、そのエンゲージリングを見た。
わたしも、海洋も……「現実」を見ていた。
……わたしは、婚約中なのだ。
四月にこのホテルで、将吾さんと結婚式を挙げるのだ。それは、もう「決定事項」なのだ。
わたしの頬をすっぽり包む海洋の手のひらを、ピヴォワンヌのある左手で、そっと外した。
そして、海洋から……
あの頃の自分から……
逃れるようにこの場を離れた。